しかし「炭素鋼にはどんな種類があるのか」「S45CとSS400は何が違うのか」「用途ごとにどれを選べばよいのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
炭素鋼は一見シンプルな材料に見えますが、炭素量の違いによって強度・靭性・加工性・熱処理特性が大きく変化します。
本記事では、炭素鋼の種類を体系的に整理し、JIS規格との関係や用途別の選定基準までを実務視点で詳しく解説します。
炭素鋼とは何か|鉄と炭素の最も基本的な合金
炭素鋼とは、鉄を主成分とし、炭素を主な合金元素として含有する鋼材の総称です。
一般的に、炭素含有量が約0.02〜2.11%の範囲にある鋼を炭素鋼と呼び、それ以上になると鋳鉄に分類されます。
炭素は鉄の結晶構造に影響を与え、強度や硬さを高める一方で、延性や加工性を低下させる性質を持っています。
このため炭素鋼は、炭素量を調整することで用途に応じた特性を得られる、非常に汎用性の高い材料となっています。
炭素鋼が広く使われる理由
- 材料コストが比較的安価
- 規格が明確で入手性が高い
- 切削・溶接・熱処理など加工方法が豊富
- 用途に応じて特性を調整しやすい
これらの理由から、炭素鋼は産業機械、建築、自動車部品、治工具など、非常に幅広い分野で使用されています。
炭素鋼の種類は「炭素量」で決まる
炭素鋼の種類を理解する上で最も重要なのが炭素含有量です。
一般的に炭素鋼は、以下の3つに分類されます。
| 分類 | 炭素含有量 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 低炭素鋼 | 〜0.25% | 加工性・溶接性に優れる |
| 中炭素鋼 | 0.25〜0.60% | 強度と加工性のバランスが良い |
| 高炭素鋼 | 0.60%以上 | 高硬度・高耐摩耗性 |
低炭素鋼の種類と特徴
低炭素鋼は炭素量が少ないため、鉄本来の延性と靭性を活かした材料です。
切削加工や塑性加工がしやすく、溶接性にも優れています。
代表的な低炭素鋼(JIS規格)
- SS400:一般構造用圧延鋼材
- S10C:機械構造用炭素鋼
- S15C
SS400は建築や架台、ベースフレームなどに多用され、S10CやS15Cは軽負荷部品に使用されます。
中炭素鋼の種類と特徴
中炭素鋼は、強度と加工性のバランスに優れた炭素鋼です。
機械部品として最も使用頻度が高く、熱処理による特性調整が可能な点が大きな特徴です。
代表的な中炭素鋼
- S35C
- S45C
- S50C
特にS45Cは、シャフト、ギア、治具部品など幅広い用途で使われています。
焼入れ・焼戻しを行うことで、耐摩耗性と靭性を両立できるため、汎用性が非常に高い材料です。
高炭素鋼の種類と特徴
高炭素鋼は炭素量が多く、非常に高い硬度を得られる材料です。
一方で、延性や溶接性は低下するため、使用用途は限定されます。
代表的な高炭素鋼
- S65C
- S70C
- S80C
主に刃物、ばね、耐摩耗部品など、硬さが最優先される用途で使用されます。
高炭素鋼は加工条件を誤ると割れやすいため、設計段階での材料理解が重要です。
炭素鋼とJIS規格の関係
日本では炭素鋼の多くがJIS規格によって定義されています。
JIS G 4051(機械構造用炭素鋼鋼材)では、S〇〇Cという記号で炭素量が示されています。
S45C S:Steel(鋼) 45:炭素含有量 約0.45% C:Carbon(炭素)
用途別|炭素鋼の選び方で失敗しないために
炭素鋼を選定する際は、以下の観点を整理することが重要です。
- 必要な強度・硬度
- 加工方法(切削・溶接・塑性加工)
- 熱処理の有無
- コストと入手性
例えば、溶接構造物には低炭素鋼、機械部品には中炭素鋼、耐摩耗部品には高炭素鋼といったように、用途と特性を一致させることが重要です。
よくある質問
まとめ|炭素鋼の種類を理解すれば材料選定は失敗しない
炭素鋼は、炭素量という明確な基準によって種類と特性が整理できる材料です。
低炭素鋼・中炭素鋼・高炭素鋼それぞれの特徴を理解し、用途に応じて正しく選定することで、コスト・性能・加工性のバランスを最適化できます。
本記事の内容を踏まえ、設計や加工の現場でぜひ活用してください。





