鉄とアルミの違いを徹底比較｜比重・強度・加工性から選ぶ材料のポイント

鉄とアルミは、建築・機械加工・輸送機器など幅広い分野で利用される代表的な金属です。どちらも日常的に目にする素材ですが、比重や強度、耐食性、加工のしやすさなど性質が大きく異なります。材料選定の段階で「鉄とアルミのどちらを使うべきか」で迷うことは少なくありません。本記事では鉄とアルミの特性を徹底的に比較し、用途に応じた選び方のポイントを解説します。

鉄とアルミの基本特性

鉄とアルミは見た目だけでなく、物理的な特性が大きく異なります。まずは両者の比重や強度、耐食性といった基本特性を整理してみましょう。

この表からも分かるように、鉄は強度とコストの安さが魅力、アルミは軽さと耐食性が強みです。

比重の違いが与える影響

鉄の比重は約7.85、アルミは約2.70であり、同じ体積ならアルミは鉄の約3分の1の重さになります。このため、軽量化が求められる航空機や自動車分野ではアルミが多用されます。逆に重量が必要な構造材や工作機械のベッドなどでは鉄が選ばれます。詳しくは鉄の比重についての解説も参考にしてください。

強度と剛性の比較

強度とは破壊に耐える力、剛性は変形しにくさを指します。鉄は高い強度と剛性を持つため、大型構造物や耐荷重部品に適しています。一方アルミは強度では鉄に劣りますが、合金化によって高強度化が可能です。

鉄の強度

炭素鋼や合金鋼は高い引張強度を持ち、建築や橋梁、機械部品に利用されます。特にS45CやSS400といった鋼材は汎用性が高く、S45CとSS400の違いを知ることで適切な選定が可能です。

アルミの強度

純アルミは柔らかいですが、ジュラルミンなどのアルミ合金は強度が大きく改善され、航空機やスポーツ用品に使用されます。それでも比強度（強度÷比重）では鉄に匹敵する場合もあり、軽さを活かした設計に有効です。

加工性と切削のしやすさ

鉄とアルミでは切削・溶接の特性も異なります。

• 鉄：切削性が安定し、フライス加工や旋盤加工に適する。ただし硬度が高い鋼材では工具摩耗が課題。
• アルミ：柔らかく切削抵抗が小さいため加工しやすい。ただし切りくずが工具に付着しやすく、仕上げ面に影響する場合がある。

効率的な加工のためには、工具材質や切削条件の調整が重要です。詳しくは工具選定のポイントも参考にしてください。

耐食性とメンテナンス性

鉄はそのままでは錆びやすいため、塗装やメッキなどの防錆処理が必須です。一方、アルミは自然に酸化被膜を形成するため錆びにくく、屋外用途に適しています。ただし、海水環境など塩分にさらされるとアルミも腐食するため注意が必要です。

鉄の耐食性改善方法

鉄の防錆には亜鉛メッキ、クロムメッキ、塗装、ステンレス化などが行われます。ステンレス鋼はクロムを含有することで高い耐食性を持ち、食品加工設備や建築外装に多用されています。

アルミの耐食性改善方法

アルマイト処理（陽極酸化処理）を施すことで耐食性と耐摩耗性をさらに向上できます。アルミの特性を活かしつつ表面強化することで、機械部品や装飾品に広く用いられています。

鉄とアルミの用途事例

鉄とアルミは、それぞれの特性に応じて以下のような分野で活用されています。

• 鉄：建築資材、橋梁、産業機械、工具、鉄道車両
• アルミ：航空機、自動車、飲料缶、精密機器、装飾部品

このように「重さが必要な場面では鉄」「軽量化が必要な場面ではアルミ」と使い分けられています。

まとめ

鉄とアルミはどちらも優れた特性を持ちますが、用途によって適材適所があります。鉄は強度・剛性・コストの安さ、アルミは軽さ・耐食性・加工性で選ばれる傾向があります。比重や強度の違いを理解し、最適な材料を選定することが効率的な設計・加工につながります。

よくある質問（FAQ）

Q1: 鉄とアルミの重さの違いはどのくらいですか？

A1: 鉄の比重は約7.85、アルミは約2.70で、同じ体積ならアルミは鉄の約3分の1の重さになります。例えば、1m×1m×1cmの板材では鉄が約78.5kg、アルミが約27kgとなり大きな差が出ます。この違いは設計や輸送コストに直結します。

Q2: 鉄とアルミではどちらが加工しやすいですか？

A2: 一般的にはアルミの方が柔らかく切削抵抗が小さいため加工しやすいです。ただし切りくずの処理や工具への付着に注意が必要です。鉄は硬度が高い場合があり工具摩耗が問題となりますが、安定した切削性があります。加工効率を高めるには工具選定が重要です。

Q3: 鉄とアルミではどちらが錆びにくいですか？

A3: アルミは自然に酸化被膜を作るため錆びにくく、屋外用途に適します。鉄はそのままでは錆びやすいため防錆処理が必要です。ただし、ステンレス鋼のように防錆性能を高めた鉄材料もあります。