SKD61とSKD11の違いを徹底比較!工具鋼の特性と用途別ガイド

「SKD61」と「SKD11」、どちらも工具鋼として広く使われていますが、その違いを知っていますか?本記事では、SKD61とSKD11の特性や用途に焦点を当て、徹底的に比較していきます。どちらを使うべきか迷っている方や、それぞれの適した使用方法を知りたい方にとって、このガイドは役立つ情報を提供するでしょう。工具鋼の世界に足を踏み入れる前に、SKD61とSKD11の違いについてしっかり理解しておきましょう。

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目次

SKD61とSKD11の基本比較

SKD61とSKD11は、共に高級工具鋼として使用される鋼材で、金型や工具の製造に広く利用されています。以下では、それぞれの定義、化学成分、硬度や特性を比較し、各鋼材のメリットとデメリットについて整理しました。


SKD61とSKD11の定義とは

  • SKD61
    • SKD61は、高速工具鋼の一種で、主に金型やプレス工具に使用されます。耐熱性や耐摩耗性に優れ、非常に高温環境下でも性能を発揮します。
  • SKD11
    • SKD11は、冷間加工用の工具鋼で、耐摩耗性や耐衝撃性に優れています。金型や切削工具、プレス金型などに広く使用され、優れた靭性を持っています。

SKD61とSKD11の化学成分の違い

成分SKD61SKD11
炭素 (C)0.38~0.45%1.40~1.60%
クロム (Cr)4.50~5.50%11.00~13.00%
モリブデン (Mo)1.20~1.50%0.70~1.20%
バナジウム (V)0.20~0.50%0.10~0.30%
その他ニッケル (Ni)、タングステン (W)、シリコン (Si) などコバルト (Co)、マンガン (Mn) など
  • SKD61
    • クロムとモリブデンが含まれており、これらが耐熱性や耐摩耗性を高めています。炭素量は中程度で、靭性も比較的良好です。
  • SKD11
    • 高いクロム含有量が特徴で、これが耐摩耗性と硬度を向上させます。炭素含有量が高く、硬度が非常に高いことが特徴です。

SKD61とSKD11の硬度と特性

  • SKD61
    • 硬度:通常の硬度は58~62HRC程度です。高温で使用されるため、高温時でも硬度が安定しています。
    • 特性:耐熱性が優れ、非常に高い耐摩耗性を持ちます。さらに、焼入れ後に得られる硬度は比較的均一で、耐食性や靭性も良好です。
  • SKD11
    • 硬度:硬度は通常60~65HRC程度で、非常に高い硬度を誇ります。
    • 特性:耐摩耗性が非常に高く、特に冷間加工時にその特性が活かされます。耐衝撃性にも優れており、切削やプレスの金型に最適です。

各鋼材のメリットとデメリット

SKD61のメリット

  • 耐熱性:高温下でも性能を発揮し、特に金型などの高温環境下で使用するのに適しています。
  • 均一な硬度:焼入れ後の硬度が均一で、安定した性能を発揮します。
  • 優れた耐摩耗性:長時間の使用でも摩耗に強いです。

SKD61のデメリット

  • 比較的低い硬度:SKD11と比較して硬度が少し低く、耐摩耗性は劣ることがあります。
  • コストが高い:耐熱性や加工性が優れている分、他の工具鋼に比べてコストが高いことがあります。

SKD11のメリット

  • 高い硬度:非常に硬いため、耐摩耗性が優れており、長期間使用できます。
  • 優れた耐摩耗性と耐衝撃性:冷間加工や切削において、非常に高い耐性を発揮します。
  • 安定した性能:高温・高負荷下でも安定して使用できます。

SKD11のデメリット

  • 耐熱性が低い:SKD61と比較して、耐熱性はやや劣り、熱による変形や劣化が早い可能性があります。
  • 硬度が高いため加工が難しい:硬度が高いため、加工が難しく、特別な加工技術が必要になります。

SKD61とSKD11の用途別解説

SKD61とSKD11は、それぞれ異なる特性を持っており、用途によって最適な鋼材が異なります。以下では、各鋼材の用途と特徴、さらに用途に応じた適切な選択方法について解説します。


SKD61の用途と特徴

  • 用途
    • 金型:特にプラスチック金型、ダイキャスト金型、射出成形金型などに使用されます。
    • プレス工具:プレス金型や金属の打抜き、曲げ加工などの工具として利用されます。
    • バルブ・ポンプ部品:高温環境で使用されるバルブやポンプの部品にも使用されます。
  • 特徴
    • 耐熱性に優れている:SKD61は高温でも硬度を維持し、熱による劣化が少ないため、高温環境で使用される金型や工具に適しています。
    • 均一な硬度:焼入れ後の硬度が均一で、性能が安定しているため、長期的な使用にも耐えます。
    • 耐摩耗性が高い:高温での摩耗にも強いため、耐久性が高く、長期にわたる使用が可能です。

SKD11の用途と特徴

  • 用途
    • 冷間加工工具:特に冷間鍛造用金型や切削工具に広く使用されます。
    • プレス金型:冷間プレス金型や、金属の絞り、押し出し金型などに利用されます。
    • 切削工具:ドリルやミーリングカッター、タップなどの切削工具にも使用されます。
  • 特徴
    • 高硬度:SKD11は非常に高い硬度を持ち、耐摩耗性が優れているため、長時間の使用でも性能が落ちにくいです。
    • 耐摩耗性:冷間加工時に発生する摩擦や圧力に強く、金属の切削や成形に適しています。
    • 優れた耐衝撃性:衝撃や過酷な加工条件にも耐えうる強度を持っており、冷間加工の過酷な環境に最適です。

用途に応じた適切な選択方法

  • 高温で使用する金型や工具
    • 選択鋼材:SKD61
    • 理由:高温環境で使用される金型や工具において、SKD61は優れた耐熱性と安定した硬度を提供します。温度変化に強く、長期間の使用に耐えることができます。
  • 冷間加工や切削工具
    • 選択鋼材:SKD11
    • 理由:冷間加工や切削時には、SKD11の高い硬度と耐摩耗性が非常に有効です。金属の切削やプレス作業など、冷間加工の過酷な条件に耐える特性を持っています。
  • プレス金型
    • 選択鋼材:使用条件に応じて、SKD61またはSKD11を選択
    • 理由:プレス金型では、冷間と高温の両方で使用されることがあるため、使用環境に応じて選択する必要があります。高温環境ならSKD61、冷間での使用が主ならSKD11が最適です。
  • 切削工具
    • 選択鋼材:SKD11
    • 理由:切削工具では、SKD11の高硬度と耐摩耗性が重要であり、長期間の使用に耐える性能が求められます。

加工方法と熱処理の違い

加工方法と熱処理は、金属の特性を変化させるための重要な手段ですが、それぞれのアプローチに違いがあります。以下では、SKD61とSKD11における加工性と熱処理、そして熱処理が特性に及ぼす影響について解説します。


SKD61の加工性と熱処理

  • 加工性
    • 加工難易度:SKD61は硬度が高いため、加工が難しい場合があります。しかし、適切な工具と切削条件を用いることで、加工が可能です。
    • 加工時の注意点:高硬度により摩耗が進むため、切削工具の寿命を考慮する必要があります。硬度が均一であり、熱処理後も安定した形状を保つ特性を持っています。
  • 熱処理
    • 焼入れ:SKD61は高温でも耐える性質を持つため、焼入れが必要です。焼入れ後は高い硬度を持ち、耐摩耗性が向上します。
    • 焼戻し:焼入れ後の焼戻し処理で、硬度と靭性のバランスを取ることができます。焼入れ後に適切な焼戻しを施すことで、割れにくくなるため、耐久性が向上します。
  • 熱処理が特性に及ぼす影響
    • 耐熱性向上:焼入れにより、SKD61は高温での耐摩耗性と耐衝撃性が向上し、高温環境で使用される金型や工具に最適です。
    • 硬度の安定性:焼入れ後の硬度が均一であるため、形状保持や性能安定性が向上します。

SKD11の加工性と熱処理

  • 加工性
    • 加工難易度:SKD11は非常に高い硬度を持ち、冷間加工に適していますが、加工時に工具の摩耗が速く進むため、適切な冷却と工具選びが重要です。
    • 加工時の注意点:硬度が高いため、切削時の熱の発生に注意が必要で、熱処理後の工具の磨耗が大きい点が特徴です。
  • 熱処理
    • 焼入れ:SKD11は冷間加工や切削に特化した鋼材であり、焼入れによって高い硬度と耐摩耗性を実現します。焼入れ処理後、冷却速度と温度が特に重要です。
    • 焼戻し:焼入れ後に焼戻しを行うことで、硬度と靭性のバランスをとり、衝撃に対する耐性を高めます。
  • 熱処理が特性に及ぼす影響
    • 耐摩耗性向上:焼入れによって、SKD11の耐摩耗性が大幅に向上し、冷間加工や切削作業における性能が最大化します。
    • 硬度と靭性のバランス:焼入れ後に適切な焼戻しを施すことで、硬度と靭性を両立させ、工具の寿命が長くなります。

加工方法と熱処理の違いによる特性の変化

  • 加工方法は、金属の形状を変えたり、表面を処理するために用いられます。切削や圧延などの加工方法によって、部品の精度や表面品質を改善できますが、硬度や耐摩耗性の向上は限られます。
  • 熱処理は、金属の内部構造を変えることで、硬度や耐摩耗性、靭性を調整します。焼入れや焼戻しなどを通じて、金属の特性を大きく変化させることができます。

工具鋼の選択ガイド

工具鋼は、金属加工において非常に重要な役割を果たす素材です。特にSKD61とSKD11は、高い耐久性と加工性を誇る鋼材であり、それぞれの特性に合わせた選択が求められます。以下では、これらの鋼材を選択する際の基準や注意点について詳しく解説します。


SKD61とSKD11の選択基準

  • SKD61
    • 高い靭性と耐摩耗性を持つ工具鋼で、特に金型に使用されることが多い。
    • 温間加工や金型の成形、冷間圧延などに適しており、複雑な形状の加工が可能。
    • 焼入れ硬度は比較的高く、強度と耐久性に優れています。
  • SKD11
    • 高硬度、高耐摩耗性を持ち、特に精密な金型や切削工具に使用されます。
    • 主に冷間加工に適しており、高い表面硬度を保つため、長期間にわたる安定した性能が求められる用途に適しています。
    • 焼入れ後の硬度が高く、硬い材料に対して優れた耐摩耗性を発揮します。


加工方法や使用用途に基づく選択

  • 加工方法の選択
    • SKD61は温間作業向けに適しているため、金型や高温環境での使用が求められる場合に向いています。
    • SKD11は冷間加工向けで、切削やプレス加工の高精度が求められる部品の製造に向いています。
  • 使用用途の選択
    • SKD61は複雑な金型や多くの成形が必要な部品に最適です。
    • SKD11は精密金型や切削工具、機械部品に適しています。特に高精度が要求される用途に選ばれます。


コストパフォーマンスと耐久性の比較

  • コストパフォーマンス
    • SKD61は、比較的高価であるものの、その耐久性や成形性が高く、長期間の使用が可能です。これにより、コストパフォーマンスが向上します。
    • SKD11は、耐摩耗性が高く、長期間使用することができますが、その加工には高度な技術が必要なため、初期費用が高くなることがあります。
  • 耐久性の比較
    • SKD61は、温間加工でも使用できるため、耐摩耗性が高く、長寿命を期待できます。特に高温環境での性能が優れています。
    • SKD11は、冷間加工の環境下で使用する場合に特に優れた耐摩耗性を発揮し、硬度が高いため、長期間使用が可能です。


金型用鋼材としてのSKD61とSKD11

金型の選定は、製造プロセスや製品の品質に大きな影響を与えるため、適切な鋼材を選ぶことが重要です。SKD61とSKD11は、どちらも金型に使用される鋼材として広く利用されており、それぞれに特有の利点があります。以下に、金型用途でのSKD61とSKD11の利点を比較し、選択ポイントを解説します。


金型用途でのSKD61の利点

  • 温間加工への適性
    • SKD61は、温間で使用される金型に最適です。高温環境でも耐摩耗性を維持し、変形しにくいため、プレス金型や鋳造金型などの温間加工に適しています。
  • 高靭性
    • SKD61は、靭性が高く、金型にかかる衝撃や摩耗に強い特性を持っています。これにより、破損のリスクを減少させ、長期間使用が可能です。
  • 優れた加工性
    • SKD61は、加工性が良好で、精密な金型製造が可能です。成形性が高く、複雑な形状の金型にも対応できるため、様々な製品に利用されます。
  • 耐熱性
    • SKD61は高温環境下での使用においても優れた耐熱性を持っており、特に高温時における硬度の維持が重要な金型に適しています。


金型用途でのSKD11の利点

  • 冷間加工に強い
    • SKD11は、冷間加工向けの金型に特に優れた特性を持っています。硬度が非常に高く、冷間圧延、絞り、スタンピングなどの精密加工に最適です。
  • 優れた耐摩耗性
    • SKD11は、高い耐摩耗性を持ち、長期間使用できるため、長寿命な金型を必要とする用途に適しています。特に精密な金型や切削工具に重宝されます。
  • 耐衝撃性
    • SKD11は、高硬度ながら衝撃に対する耐性もあり、破損しにくい特性を持っています。このため、金型の壊れにくさや長寿命を求められる加工環境で有利です。
  • 安定した熱処理後の性能
    • 焼入れ後、硬度や靭性が安定し、冷間加工時において高いパフォーマンスを発揮します。特に精密金型の用途で、その強みを発揮します。


金型用鋼材の選択ポイント

  • 使用する加工温度
    • 高温で使用する金型にはSKD61が適しています。特に温間加工で使用される金型には、耐熱性と高靭性が重要です。
    • 一方、冷間加工に特化した金型にはSKD11が最適です。冷間圧延や絞りなどで高い耐摩耗性と硬度が求められる場合に適しています。
  • 金型の用途と寿命
    • SKD61は温間加工で使用する場合に高い耐摩耗性と耐衝撃性が求められる場面で活躍しますが、冷間加工の場合はSKD11の方が適していることが多いです。
    • SKD11は冷間加工用金型において耐摩耗性に優れ、長寿命が求められる精密金型に最適です。
  • コストと性能のバランス
    • SKD61は、温間加工向けに優れた性能を発揮する一方で、コストがやや高めになることがあります。しかし、長期間の使用と安定した品質を考慮すれば、コストパフォーマンスは良好です。
    • SKD11は、耐摩耗性と高硬度を持ちつつ、冷間加工の金型には非常に適していますが、初期費用が高くなる可能性があるため、用途に応じて適切な選択が求められます。

まとめ

SKD61とSKD11は両方とも工具鋼ですが、その特性や用途には違いがあります。SKD61は耐熱性に優れており、高温での使用に適しています。一方、SKD11は耐摩耗性に優れており、切削加工用途に適しています。これらの違いを理解することで、適切な材料を選択し工具の性能を最大限に引き出すことができます。

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